ラッチングリレー研究1


コンパクトエフェクタのトゥルーバイパス化に際して、リレーを使う方法をかなり以前から模索だけはしておりましたが、リレー自体の電力消費の多さに二の足を踏んでおりました。(電池駆動が現実的でなくなる。しかも地球にやさしくない)

ある時、「ラッチングリレーを使うと電力消費が切り替え時だけで済む」という記事を見かけ、試してみようと思い立ったのがこの項の端緒です。とはいえふつーのリレーの使い方すらわからない自分にとってはかなりの難産ではありましたが。


<ラッチングリレーとは>
ふつーのリレーは、コイル(電磁石)に電気を入れっぱなしにしないとSET状態を保持できません(電気を消すとバネかなんかの力でRESET状態に戻る)。SET状態を続けるためにコイルに電力をかけ続けなくてはいけない分、電力の消費がかさみます。

ところがラッチングリレーの場合は、1回コイルに(パルス状の)電気を入れると、電気を消した後も(永久磁石かなんかの力で)その状態を保持します。SET状態を続けるためにコイルに電力をかけ続ける必要はなく、その分省電力であると言えます。

ラッチングリレーには、構造上1巻線型と2巻線型があります。1巻線型はコイルがひとつしかなく、コイルに正のパルスをかけたときにSET状態,負のパルスをかけたときにはRESET状態になります。
対して2巻線型はSET用およびRESET用のふたつのコイルがあります。SET用のコイルにパルスをかけたときにSET状態,RESET用のコイルにパルスをかけたときにはRESET状態になります。
(ここでは便宜上SET,RESETという表現をしておりますが、もちろん通常のON-ONスイッチと同様、2回路の切り替えもできます)

ただ、通電は切り替え時の一瞬のみ、という仕組み上、外部からの振動(たとえばライブの時にシールドを引っ張ってしまった、蹴っ飛ばしてしまった等)によりステータスが変わってしまうことが予想されます。どの程度振動に弱いかは、実装した後実際に使ってみて評価したいと思います。


ここでは、オムロンのメーカー資料に1巻線ラッチングリレーのドライブ回路そのものが載っていたので、まずはそのままパクらせていただくこととします。
(リンク先ページ)→ プリント基板用リレー 共通の注意事項(673KB) 21ページ目(B-40)

<上の回路の説明>
現在入手が一番簡単なラッチングリレーは、おそらく松下電工のTQシリーズ(制御機器Qサービスを利用)だと思います。こういう企業からすると非常に面倒くさい(と思われる)試作およびリテールに対するサービスを用意していただけている(しかも割合対応が早い)ことに感謝します。もし量産等でラッチングリレーをお使いになる方がいらっしゃったら松下電工でお買い求めいただければと思います。わたしと松下電工との間に特別な利害関係があるわけでもないですが。

それはさておき、上記のような入手性および使用回路上の理由で、ここでは松下電工の1巻線ラッチングリレーATQ219(5V)を使用しています。(もし入手できたらオムロンのリレーでも試してみます。ドライブ回路を参考にさせていただいたので)リレーが5V用なので制御回路全体の電源を5Vで統一しました。ただ、スイッチからT-Flipflop Moduleまでは9Vで駆動しても問題ないかもしれません。

R1,C2はチャタリング防止用です。スイッチにcarlingのモメンタリSWCarling110-PMを使った場合には、C2の値を0.1μFにした方がよいです。Bossのエフェクタに使用されているような軽量級(?)スイッチの場合は、0.01μFぐらいの方がよさそうです。この辺は実際のスイッチの特性に合わせて現物合わせ的に決定する必要がありそうです。T-Flipflopはここでは4027(JK-Flipflop)を使って実現しましたが、4013(D-Flipflop)を使っても実現できるそうです。ただいずれにせよ2回路あるうちの片方しか使わないので不経済(?)です。RohmのBA634という専用ICは1回路T-Flipflopなのでエフェクタに内蔵する場合等スペースファクターが重視される場合には使い勝手がよさそうです。

スイッチを踏むごとにT-Flipflopにより出力信号が0→1→0→・・・と切り替わります。T-Flipflopの出力そのままではリレーを駆動できないので、間にBufferをはさみます。Bufferとしてここではデジタルトランジスタを使っていますが、なければ2SC1815+2SA1015+抵抗10kΩ×4で実装してもかまいません。省スペース性は損なわれますが。

実はこのBufferで信号が反転するのですが、今回はとにかくリレーが切り替わればよいので無問題とします。多少気持ち悪いですが。ただ、実際に使ってみて反応時間やチャタリング等の問題が顕在化するようであれば、シュミットトリガインバータでもぶち込んでみます。

Relay Drive Moduleで重要なのはR3とC3の定数です(図中赤色の部分)。今回はカット&トライで数値を決定しました。大体♪=144ぐらいの連打までは行けるようです。あまり反応性が速くてもチャタリングに弱くなるのと、使用目的が足踏みによるオルタネート切り替えなのでさすがに高橋名人の16連射(古い!)とかはしないと思うのとで、こんなものかと思っています。
リレーのメーカーや品番を変えた場合,反応性の好みが異なる場合 および 別の用途に使用する場合は定数を調整してください。(Bufferの能力にもよると思いますが)R3を少なくすると概ね反応が速くなるようですが、C3は大きくし過ぎると今度はチャージに時間がかかるので、最適な条件を決定するのは案外難しいです。

Relay Drive Moduleの動作機序は、切り替え時にC3への充放電によってパルスが生成すること、およびパルスによってQ3が一瞬ONになることを利用したものと思います。D1はONの信号のみを流す整流に、D2はQ3の保護に使われているのでしょうか。

Indicatorは本当はこのように直結するとリレーの反応性に悪影響を与えるのだと思いますが、Bufferに多少の余裕がありそうだったので、とりあえず問題ないことにしています。

<長所>
○ラッチングリレー研究2の回路より電圧降下に強い。7Vぐらいまでは行けるはず。
○消費電力はON時5.3mA,OFF時2.62mA(フリップフロップとしてBA634を使用)
○原理的に逆起電力に強い。

<欠点>
○反応がもっさり。フットスイッチではぎりぎりOKでもコンタクトスイッチではまず使えない。
○スイッチを押したのに反応しないこともありそう。反応しなかった場合、インジケータの表示と回路の切り替わりが同期しないことも・・・。

投稿者 fff : 12:51 PM | コメント (0)