Roland BeeGee

BeeGee.gif
TA7504Mというのは、東芝の741互換のIC(CANタイプ)です。
1段目および最終段のトランジスタまわりの回路があまり見ない形ですが、それ以外はオーソドックスな回路構成だと思います。
1段目の回路ですが、電解コンデンサ10μFにより470kΩ×2の中点が交流的に接地されていますので、ベースのバイアスは安定化されますが、コレクタ→ベース間の負帰還は行われません。交流的に負帰還がかからないので、増幅率はオープンループゲイン倍(?)になります。
ただ、所詮トランジスタ1段なので裸の増幅率といえどもあまり高くはありません。この回路の場合を計算してみると(詳細は、下記<1段目トランジスタ回路の増幅率について>参照)、概ね95倍程度になります。
この辺、ファズなのでゲインをなるべく大きく、歪みは別に減らさなくてもいいや、という方針で回路設計されたのかな、という気がします。

トーンはいわゆるBigMuff型になっています。オペアンプ段での過激な増幅(増幅率:(2.2M+10k)/10k=221倍!)と相俟って、この辺がBeeGeeのFuzzたる所以になっているようです。

ちなみに、回路図を見てもわかるようにオリジナル機ではオペアンプ段のゲインが固定になっています。もしゲインを可変にしたい場合は、MODの項に示すようにオペアンプの帰還の2.2Mを可変にすることをおすすめします。
(反転入力からバイアスにつながる10kに2Mの可変抵抗を足してみたりもしたのですが、ゲインを下げた時の音があまり使いモノにならなかった。帰還抵抗が大き過ぎて入力バイアス電流が確保できなかったものと思われる)

2段目の回路について、電解コンデンサ1μFにより入力にブートストラップがかかっているため
(詳細は、下記<2段目トランジスタ回路の増幅率および入力インピーダンスについて>参照)、入力インピーダンスが1.7Mと高くなります。この場所で入力インピーダンスを稼いでもそんなに意味があるような気はしませんが・・・。増幅率は-Rc/Reのレベル(-2.5倍)とあまり高くはなく、この段ではゲインを稼いでいないことがわかります。

<1段目トランジスタ回路の増幅率について>
bgsch0.gif
vout=Rc'・(-ic)=-Rc'・hfe・ib
vin=(Rin+hie')/hie'・hie'・ib=(Rin+hie')・ib
   Rc'=Rc・Rf_1/(Rc+Rf_1)
   hie'=hie・Rb・Rf_2/(hie・Rb+hie・Rf_2+Rb・Rf_2)

∴Av=vout/vin=(-Rc'・hfe・ib)/((Rin+hie')・ib)=-Rc'・hfe/(Rin+hie')

hieはT=300Kの場合近似的に以下の式で示されます。

hie=kT/q・hfe/Ic=0.03868・hfe/Ic


次に、直流等価回路(下図)よりIcを算出します。
bgsch1.gif
Vbe=(If-Ib)・Rb
⇒ Vbe/Rb=If-Ib
⇒ If=Ib+Vbe/Rb

Vbe=0.6Vとすると、Rb=220kΩより、

∴If=Ib+0.6/220k

Vcc=(Ic+If)・Rc+If・Rf+Vbe
   =Ib・hFE・Rc+(Ib+Vbe/Rb)・(Rc+Rf)+Vbe
   =Ib・hFE・Rc+Ib・(Rc+Rf)+Vbe・(Rc+Rf)/Rb+Vbe
   =Ib・((hFE+1)・Rc+Rf)+Vbe・(Rc+Rf+Rb)/Rb

Vcc-Vbe・(Rc+Rf+Rb)/Rb=Ib・((hFE+1)・Rc+Rf)
⇒ Ib=(Vcc-Vbe・(Rc+Rf+Rb)/Rb)/((hFE+1)・Rc+Rf)

∴Ic=hFE・Ib=hFE・(Vcc-Vbe・(Rc+Rf+Rb)/Rb)/((hFE+1)・Rc+Rf)

Rc=15kΩ,Rf_1=Rf_2=470kΩ,Rf=Rf_1+Rf_2=940kΩ,Rb=220kΩより、

∴Ic=hFE・(Vcc-5.34・Vbe)/(hFE・15k+955k)

hie=0.03868・hfe/Ic=0.03868・hfe/(hFE・(Vcc-5.34・Vbe)/(hFE・15k+955k))
   =0.03868・hfe/hFE・(hFE・15k+955k)/(Vcc-5.34・Vbe)
   =193.4・hfe/hFE・(hFE・3+191)/(Vcc-5.34・Vbe)

近似的にhfe=hFEと考えると、
hie=193.4・(hFE・3+191)/(Vcc-5.34・Vbe)

2SC1000GRのhFEは200-400なので、今回の計算ではhFE=300と置くことにします。
また、Vcc=9V(006P電池の電圧)、Vbeについては、一般的に0.6-0.7Vぐらいなので、今回の計算ではVbe=0.65Vとします。

hie=193.4・(hFE・3+191)/(Vcc-5.34・Vbe)
   =193.4・(300・3+191)/(9-5.34・0.65)
   =2.11×105/5.529
   =38.2kΩ

hie'=hie・Rb・Rf_2/(hie・Rb+hie・Rf_2+Rb・Rf_2)
   =38.2k・220k・470k/(38.2k・220k+38.2k・470k+220k・470k)
   =31.0kΩ

Rc'=Rc・Rf_1/(Rc+Rf_1)=15k・470k/(15k+470k)
   =14.536k

Av=-Rc'・hfe/(Rin+hie')
   =-14.536k・hfe/(15k+31.0k)
   =-0.316hfe
∴Av=-94.8

ちなみに、2SC1000GRのhFEを200-400,006P電池の電圧を8.0-9.6V,Vbe=0.6-0.7Vと考えた時には、hieは23.9kΩ(hFE:200,Vcc:9.6V,Vbe:0.6V)から63.1kΩ(hFE:400,Vcc:8V,Vbe:0.7V)、Avは-66.1(hFE:200,Vcc:8.0V,Vbe:0.7V)から-121.5(hFE:400,Vcc:9.6V,Vbe:0.6V)の幅の値をとることになります。さらに、hFEを300に固定して考えた場合でも、依然hie,Avともに33.0kΩ, -103.7(Vcc:9.6V,Vbe:0.6V)から49.5kΩ, -83.5(Vcc:8.0V,Vbe:0.7V)のばらつきが残ります(以上Excelにて計算)。つまり、この程度の概算であまり計算を緻密に行っても現実的な意味は薄いということです。

例えば今回の場合は、以下のようにhie=hie',Rc=Rc'と考えてもさほど結論には影響は出ないことがわかります。
hie=38.2kΩ,hfe=300より、
Av≒-Rc・hfe/(Rin+hie)
   =-15k・300/(15k+38.2k)
∴Av=-84.6


以上の計算結果を踏まえて、Avについての計算式を簡単に解析してみます。

Av=-Rc'・hfe/(Rin+hie')≒-Rc・hfe/(Rin+hie)
入力電圧vinは、RinとQ1の入力インピーダンスhieで分圧されてhie/(Rin+hie)倍になってQ1に入力されます。Q1に入力された電圧vb=hie/(Rin+hie)・vinは、入力インピーダンスhieにより入力電流ib=vb/hie=hie/(Rin+hie)・vin/hie=1/(Rin+hie)・vinに変換されます。トランジスタQ1は入力電流ibのhfe倍をコレクタに流す作用があるので、コレクタに流れる電流は、ic=hfe・ib=hfe/(Rin+hie)・vinとなります。このコレクタ電流icは、Rcにて出力電圧vout=-Rc・hfe/(Rin+hie)・vinに変換されます(電圧変位の基準がVccになるので、位相が反転する)。
ゆえに電圧増幅率Avは、近似的にAv=vout/vin≒-Rc・hfe/(Rin+hie)で求められることになるわけです。


ちなみに10μF電解コンデンサがない時の増幅率は、交流等価回路(下図)より以下のように算出できます。
bgsch2.gif

vin=iin・Rin+vb=(ib+if-i0)・Rin+vb
vb=ib・hie=i0・Rb
⇒ i0=hie/Rb・ib

∴vin=(ib+if-i0)・Rin+vb=(ib・hie/Rb+ib+if)・Rin+ib・hie
   =(Rin+hie+Rin/Rb・hie)・ib+Rin・if

vout=-if・Rf+vb=-if・Rf+ib・hie
vout=-iout・Rc=(-hfe・ib+if)・Rc
⇒ (-hfe・ib+if)・Rc=-if・Rf+ib・hie
⇒ (hfe・Rc+hie)・ib=if・(Rc+Rf)

hfe・Rc≫hieなので、hfe・Rc+hieの部分のhieを無視すると、ifとibの関係式が以下のように求められます。

∴if=hfe・Rc/(Rc+Rf)・ib

このifとibの関係式を使って、vinおよびvoutの式のifを消去します。

vin=(Rin+hie+Rin/Rb・hie)・ib+Rin・hfe・Rc/(Rc+Rf)・ib
   =((Rin+hie+Rin/Rb・hie)+Rin・hfe・Rc/(Rc+Rf))・ib

vout=-if・Rf+ib・hie=-hfe・Rc・Rf/(Rc+Rf)・ib+hie・ib
   =-hfe・Rc・Rf/(Rc+Rf)・ib+hie・ib
   =(hie-hfe・Rc・Rf/(Rc+Rf))・ib

Av'=vout/vin=(hie-hfe・Rf・Rc/(Rc+Rf)・ib)/(((Rin+hie+Rin/Rb・hie)-Rin・hfe・Rc/(Rc+Rf))・ib)
   =(hie-hfe・Rf・Rc/(Rc+Rf))/((Rin+hie+Rin/Rb・hie)+Rin・hfe・Rc/(Rc+Rf))
   =(hie・(Rc+Rf)-hfe・Rf・Rc)/((Rin+hie+Rin/Rb・hie)・(Rc+Rf)+Rin・hfe・Rc)

10μF電解コンデンサがあろうとなかろうと直流等価回路に違いはないので、hieは上の10μF電解コンデンサがある場合の結果と同じになります。よって、hFE=300の場合、33.0kΩ≦hie≦49.5kΩになります。
ここでは、上と同様にhFE=300,Vcc=9V,Vbe=0.65Vの時のhie=38.2kΩ を使用して以下の計算を行うこととします。

Rin=15kΩ,Rb=220kΩ,Rf=940kΩ,Rc=15kΩ,hfe=300より、
Av'=(hie・(Rc+Rf)-hfe・Rf・Rc)/((Rin+hie+Rin/Rb・hie)・(Rc+Rf)+Rin・hfe・Rc)
   =(38.2k・(15k+940k)-hfe・940k・15k)/((15k+38.2k+15k/220k・38.2k)・(15k+940k)+15k・hfe・15k)
   =(36481-15100・hfe)/(53254+225・hfe)

∴Av'=-37.2


上と同様にAv'についての計算式を簡略化してみます。

Av'=(hie・(Rc+Rf)-hfe・Rf・Rc)/((Rin+hie+Rin/Rb・hie)・(Rc+Rf)+Rin・hfe・Rc)

hfe・Rf・Rc≫hie・(Rc+Rf)なので、hie・(Rc+Rf)を無視すると、
Av'≒-hfe・Rf・Rc/((Rin+hie+Rin/Rb・hie)・(Rc+Rf)+Rin・hfe・Rc)
   =-hfe・Rf・Rc/((Rin+hie+Rin/Rb・hie)・(Rc+Rf)+Rin・hfe・Rc)

Rin/Rb≪1,Rc≪Rfより、
Av'≒-hfe・Rf・Rc/((Rin+hie)・Rf+Rin・hfe・Rc)
   =-hfe・Rf・Rc/(Rin・Rf+hie・Rf+Rin・hfe・Rc)
   =-hfe・Rf・Rc/(Rin・(Rf+hfe・Rc)+hie・Rf)
   =-hfe・Rf・Rc/(Rin・hfe・Rc+(Rin+hie)・Rf)
   =-Rf/(Rin+(Rin+hie)・Rf/(hfe・Rc))

∴Av'≒-Rf/(Rin+(Rin+hie)・Rf/(hfe・Rc))

この簡略化された式でAv'を算出すると、以下のようになります。(意外といい線行っていると思うのですが、いかがでしょう??)
Av'≒-940k/(15k+(15k+38.2k)・940k/(300・15k))=-36.0

以上の計算結果を踏まえて、Av'についての計算式を解析してみます。
まず、この回路を負帰還増幅回路と捉えてみます。負帰還増幅回路の増幅率Gは以下の式で求められます(参考文献1:pp52-57より)。

A:オープンループゲイン,β:帰還率,Gideal:理想オペアンプを使用した時のクローズドループゲイン とすると、
G=Gideal・(1/(1+1/Aβ))

反転増幅回路の場合、Gideal=1-1/β なので、

G=Gideal・(1/(1+1/Aβ))
   =(1-1/β)・(1/(1+1/Aβ))
   =(β-1)/β・1/(1+1/Aβ)
   =(β-1)/(β+1/A)
   =A・(β-1)/(Aβ+1)

オープンループゲインAは、Rfを取っ払って無帰還にした時のこの回路の増幅率に等しいと考えられます。帰還経路にあまり関係しないRbを無視すると、

vb=hie・ib
vin=(Rin+hie)/hie・vb
   =(Rin+hie)/hie・hie・ib
   =(Rin+hie)・ib
vout=-Rc・hfe・ib

A=|vout/vin|=|-Rc・hfe・ib/((Rin+hie)・ib)|
   =Rc・hfe/(Rin+hie)


帰還率βは、帰還抵抗をRf、入力抵抗をRinとして簡単に考えることにより、以下のようになります。
β=Rin/(Rin+Rf)

G=(β-1)/(β+1/A)
   =(Rin/(Rin+Rf)-1)/(Rin/(Rin+Rf)+1/(Rc・hfe/(Rin+hie)))
   =(-Rf/(Rin+Rf))/(Rin/(Rin+Rf)+(Rin+hie)/(Rc・hfe))
   =-Rf/(Rin+(Rin+Rf)・(Rin+hie)/(Rc・hfe))
   =-Rf/(Rin+(Rin+hie)・(Rin+Rf)/(hfe・Rc))

Rin≪Rfなので、
∴G=-Rf/(Rin+(Rin+hie)・Rf/(hfe・Rc))

これは、上で求めたAv'の式と同じになります。
ゆえに、オープンループゲインA=無帰還時の増幅率、帰還率β=Rin/(Rin+Rf) および Gideal=1-1/β として負帰還増幅回路を考えることにより、電圧増幅率Av'が近似的に求められることになります。

<2段目トランジスタ回路の増幅率および入力インピーダンスについて>
bgsch3.gif

上の回路を交流等価回路(下図)に書き直します。
bgsch4.gif
ReとRN1とRN2の並列合成抵抗をRe'とすると、
Re'=Re‖RN1‖RN2
   =1/(1/Re+1/RN1+1/RN2)
vin=ib・hie+(i0+ib+hfe・ib)・Re'

i0・Rin=ib・hie
⇒ i0=hie/Rin・ib

∴vin=ib・hie+(i0+ib+hfe・ib)・Re'
   =ib・hie+(hie/Rin・ib+ib+hfe・ib)・Re'
   =ib・(hie+(hie/Rin+1+hfe)・Re')
   =ib・(hie・(Rin+Re')+(hfe+1)・Re'・Rin)/Rin

vout=-Rc・hfe・ib

この回路の電圧増幅率Avは、

Av=vout/vin=-Rc・hfe・ib/(ib・(hie・(Rin+Re')+(hfe+1)・Re'・Rin)/Rin)
   =-Rc・hfe・Rin/(hie・(Rin+Re')+(hfe+1)・Re'・Rin)

Rin≫Re',hfe≫1なので、Rin+Re'≒Rin,hfe+1≒hfeとすると、
Av≒-Rc・hfe・Rin/(hie・Rin+hfe・Re'・Rin)
   =-Rc/(hie/hfe+Re')
∴Av≒-Rc/(hie/hfe+Re')

ちなみにhieはだいたい数十kΩ、hfeは200-400なので、hie/hfeはせいぜい数百程度ですが、Re'は5.717kΩなのでRe'≫hie/hfeになります。よってhie/hfeを無視すると、概算のAvを求めることができます。
(hie/hfeを無視した場合、Av≒-Rc/Re'=-15k/5.717k=-2.6)


次に、入力インピーダンスZinを求めます。
vin=ib・(hie・(Rin+Re')+(hfe+1)・Re'・Rin)/Rin
i0=hie/Rin・ib
⇒ iin=ib+i0=ib+hie/Rin・ib
     =(Rin+hie)/Rin・ib

Zin=vin/iin=(ib・(hie・(Rin+Re')+(hfe+1)・Re'・Rin)/Rin)/((Rin+hie)/Rin・ib)
   =(hie・(Rin+Re')+(hfe+1)・Re'・Rin)/(Rin+hie)

Rin≫Re',hfe≫1なので、Rin+Re'≒Rin,hfe+1≒hfeとすると、
∴Zin=(hie・Rin+hfe・Re'・Rin)/(Rin+hie)
   =(hie+hfe・Re')・Rin/(Rin+hie)

このとき、hieはだいたい数十kΩなのでRin≫hie、hfeは200-400なのでhfe・Re'≫hieとなる。よってhieを無視すると、概略の入力インピーダンスZinが算出できます。
(hfe=300のとき、Zin≒hfe・Re'=1.7M)


直流等価回路(下図)よりIcを算出します。
bgsch5.gif
Vcc=(IN+Ib)・RN1+IN・RN2
   =IN・(RN1+RN2)+Ib・RN1
IN=(Vcc-Ib・RN1)/(RN1+RN2)

Vb=IN・RN2=Vin-Ib・Rin
Vin=IN・RN2-Ib・Rin
   =RN2・(Vcc-Ib・RN1)/(RN1+RN2)-Ib・Rin
   =RN2/(RN1+RN2)・Vcc-(RN1・RN2/(RN1+RN2)+Rin)・Ib

Vin=Vbe+(hFE+1)・Ib・Re
Vbe+(hFE+1)・Ib・Re=RN2/(RN1+RN2)・Vcc-(RN1・RN2/(RN1+RN2)+Rin)・Ib
RN2/(RN1+RN2)・Vcc-Vbe=(hFE+1)・Ib・Re+(RN1・RN2/(RN1+RN2)+Rin)・Ib
   =((hFE+1)・Re+Rin+(RN1・RN2/(RN1+RN2))・Ib

∴Ib=(RN2/(RN1+RN2)・Vcc-Vbe)/((hFE+1)・Re+Rin+(RN1・RN2/(RN1+RN2))

ここで、Rin≫RN1‖RN2=(RN1・RN2/(RN1+RN2),hFE≫1と考えると、分母≒Rin+hFE・Reとすることができる。よって、
∴Ib=(RN2/(RN1+RN2)・Vcc-Vbe)/(Rin+hFE・Re)


Rin=1MΩ,RN1=100kΩ,RN2=56kΩ,Re=6.8kΩ,Rc=15kΩより、Vcc=9V,Vbe=0.65Vとして値を代入すると、

Ib=(RN2/(RN1+RN2)・Vcc-Vbe)/(Rin+hFE・Re)
   =(56k/(100k+56k)・9-0.65)/(1M+6.8k・hFE)
   =2.58/(1M+6.8k・hFE)
(hFEを300とすると、Ib=2.58/(1M+6.8k・300)=0.848μA)

Ic=hFE・Ib=2.58・hFE/(1M+6.8k・hFE)
(hFEを300とすると、Ic=2.58・hFE/(1M+6.8k・hFE)=0.2546mA)

hie=0.03868・hfe/Ic=0.03868・hfe/(hFE・Ib)
   =0.03868/Ib
   =0.03868/(2.58/(1M+6.8k・hFE))
   =0.03868・(1M+6.8k・hFE)/2.58
   =0.015・(1M+6.8k・hFE)
   =15k+102・hFE
(hFEを300とすると、hie=15k+102・300=45.6kΩ)

以上の結果より、hFE=300の時の電圧増幅率Av および 入力インピーダンスZinを算出します。

Av≒-Rc/(hie/hfe+Re')
   =-15k/(45.6k/300+5.717k)
   =-2.556

Zin=(hie+hfe・Re')・Rin/(Rin+hie)
   =(45.6K+300・5.717k)・1M/(45.6k+1M)
   =1.68M

このように入力インピーダンスが高くなっている理由は、C1により入力に対してブートストラップ(正帰還)をかけることでRinの両端に同相の信号が加わり、Rinに電流が流れなくなるためRinがつながっていないのと同じような状態になることによります。

エフェクタにおける初段の回路のように、前段になにがつながれるかわからない状態でこのような回路を使うのは、(ブートストラップが正帰還であるがゆえに)発振の危険をいたずらに増やすことになりそうですが、2段目以降のように前段の回路が固定ならば、それなりに有効な気がします。ただ、この部分がそんなに高いインピーダンスを求められているようにも思えないのですが。

C1がつながっていない状態(ブートストラップがかかっていない状態)での回路解析も同様に行って、結果を比較してみます。
bgsch6.gif
上の交流等価回路より、
vin=ib・hie+(hfe+1)・ib・Re
   =ib・(hie+(hfe+1)・Re)

vout=-Rc・hfe・ib

Av'=vout/vin=-Rc・hfe・ib/ib・(hie+(hfe+1)・Re)
   =-Rc・hfe/(hie+(hfe+1)・Re)

hfe≫1なので、hfe+1≒hfeとすると、
Av'≒-Rc・hfe/(hie+hfe・Re)
   =-Rc/(hie/hfe+Re)

∴Av'≒-Rc/(hie/hfe+Re)

ブートストラップありの場合の電圧増幅率がAv≒-Rc/(hie/hfe+Re')であったことを考えると、電圧増幅率については、ブートストラップあり/なしによる相違は少ない(概ねReとRe'の違いの分だけ異なる)ことがわかります。


ちなみにブートストラップありの時の計算と同様、hieはだいたい数十kΩ、hfeは200-400なので、hie/hfeはせいぜい数百程度ですが、Reは6.8kΩなのでRe≫hie/hfeになります。よってhie/hfeを無視すると、概算のAv'を求めることができます。
(hie/hfeを無視した場合、Av'≒-Rc/Re=-15k/6.8k=-2.2)


次に、入力インピーダンスZin'を求めます。
vin=ib・(hie+(hfe+1)・Re)
vin=i0・Rin
i0・Rin=ib・(hie+(hfe+1)・Re)
⇒ i0=ib・(hie+(hfe+1)・Re)/Rin

iin=i0+ib
   =ib・(hie+(hfe+1)・Re)/Rin+ib
   =ib・(Rin+hie+(hfe+1)・Re)/Rin

Zin'=vin/iin=ib・(hie+(hfe+1)・Re)/(ib・(Rin+hie+(hfe+1)・Re)/Rin)
   =Rin・(hie+(hfe+1)・Re)/(Rin+hie+(hfe+1)・Re)

hfe≫1なので、hfe+1≒hfeとすると、
∴Zin'=Rin・(hie+hfe・Re)/(Rin+(hie+hfe・Re))
   =Rin‖(hie+hfe・Re)


上記より、Zin'はRinと(hie+hfe・Re)の並列合成抵抗にほぼ等しいことがわかります。


ブートストラップありの回路もなしの回路も直流等価回路は同じなので、hieの計算結果をそのまま利用できます。hfe=300の時hie=45.6kΩなので、
hie/hfe=45.6k/300
   =152

∴Av'≒-Rc/(hie/hfe+Re)
   =-15k/(152+6.8k)=2.16

hie+hfe・Re=45.6k+300・6.8k
   =2.04M+45.6k
   =2.09M

∴Zin'=Rin・(hie+hfe・Re)/(Rin+(hie+hfe・Re))
   =(2.09M・1M)/(2.09M+1M)=676k


以上の結果を踏まえて、ブートストラップあり回路の結果とブートストラップなし回路の入力インピーダンスを比較してみます。

<ブートストラップあり>
Zin=(hie+hfe・Re')・Rin/(Rin+hie)
<ブートストラップなし>
Zin'=(hie+hfe・Re)・Rin/(Rin+(hie+hfe・Re))
   =(hie+hfe・Re)・Rin/(Rin+hie)・(Rin+hie)/(Rin+(hie+hfe・Re))

Re≒Re'と考えて、ReをRe'で置きかえると、
Zin'=(hie+hfe・Re')・Rin/(Rin+hie)・(Rin+hie)/(Rin+(hie+hfe・Re))
   =Zin・(Rin+hie)/(Rin+Zin・(Rin+hie)/Rin)
   =1/(Rin/(Zin・(Rin+hie))+1/Rin)

Rin≫hieと考えて、Rin+hie=Rinと置くと、
Zin'=1/(Rin/(Zin・(Rin+hie))+1/Rin)
   =1/(Rin/Zin・Rin+1/Rin)
   =1/(1/Zin+1/Rin)

∴Zin'≒Zin‖Rin

以上の結果より、ブートストラップなしの回路はブートストラップありの回路に比べて、概ねRinが並列にかかる分だけ入力インピーダンスが低下していることがわかります。
(上で無視した交流等価回路におけるエミッタ抵抗の相対的な低下(ReとRe'の差)も多少影響しますが)


参考文献1:トランジスタ技術SPECIAL増刊:OPアンプによる実用回路設計(馬場 清太郎著、CQ出版社)

投稿者 fff : 11:36 AM | コメント (0)

Roland BeeGee

BeeGee_MOD.gif

<Slightly MOD Versionの説明>
さすがに今の時代、ゲイン最大固定はキツイような気がします。
まあ潔いとも言えなくはないですが。
あとOUTを絞ったときに音量がゼロにならないのも気持ち悪いといえば
気持ち悪いように思います。

というわけで、わたしは上の回路図にあるようなMODをしてみました。
オペアンプの帰還抵抗を可変にして、かつOUTの47Ωを取っ払いました。
可変抵抗に直列に接続されている固定抵抗は、ゲインの可変範囲(minimum)を
決定します。47k-200kΩの間で好みに応じて設定してください。

オリジナルを尊重するならば、実機の抵抗値が2.2MΩなので可変2MΩ+固定200kΩ
としたいところですが、ゲインの低い時の音も結構使えるように感じられたので、
わたし自身は47kΩに設定しました。

投稿者 fff : 01:45 PM | コメント (0)

Roland BeeGee

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2sc1000.jpg
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投稿者 fff : 02:03 AM