Tube Echoplex Booster

PyloBooster_2.jpg

先日秋葉原某所で5703とかいうサブミニチュア管を見つけて、思わず衝動買いをしました。
(下がサブミニチュア管。ちなみに上はMT管(ギターアンプとかに入ってるやつ))
MiniTube.jpg

ちなみにピン配置はこんな感じ。
Tubepin.jpg

これだけ小さければ、わりとコンパクト(Hammond1590Bに収まるくらい)に真空管のエフェクタが出来るのでは、と思い、とっても簡単なブースターを作ってみました。


とはいえ、折角作るならミュージシャンに定評があってしかもブティックメーカーがほとんどコピーしてないようなブースターにしたい………というわけでTube Ver. Echoplex (EP-2)の回路のうち原音が通る部分をモチーフにブースターの回路図を書いてみました(下図Booster sectionの部分、書いたと言うほど大層な回路でもないけど)。
Booster sectionについては、オリジナルの定数(E24系列に合わせた若干の見直しあり)は黒字で、自作機の定数は赤で書いています。


外部電源としてBOSSのPSA-100(9V安定化電源)を使う予定です。何故9Vにこだわるのか。自分的に外部電源は9Vがデファクタスタンダードだと思い込んでいるのが一番の理由ですが、電源まで自作するのがめんどくさい(AC100V嫌いw)のと、スタジオに入った時、セッティングで焦って違うアダプタつないで機材を壊さないため、という理由もあったりします。

B電源(回路図のB Power Supplyの部分)の回路は昔GEOに載ってた記事「9Vから33Vを作る回路」をパクリました。(現在は何故かGEOから記事が無くなってます・・・)

33Vとした理由は、50V以下なら滅多なことでは感電事故は起こらないだろうという守りの気持ちと、せっかく真空管を使うんだったらある程度電圧上げてヘッドルームを確保したい攻めの気持ちとの妥協の産物です。
今回の回路ではチャージポンプICの耐圧は高い方がよいだろうということでLTC1144にしています。あとダイオードは順方向の電圧降下が低いショットキーダイオードを使っています。

なおこの回路はコッククロフト・ウォルトン整流回路の変形(各電解コンのマイナス側の配線先が異なるのみ)であり、動作機序はほとんど変わらないです(よね)。理屈については、こちらの「倍電圧回路について」が自分にはわかりやすかったのでオススメします。


ヒーター電源(回路図のConstant Current Supplyの部分)については、こちらの素敵な記事「真空管のヒーターに関する実験」を参考にして、突入電流を抑制できる定電流回路にすることとします。

サブミニチュア管5703のデータシートによるとヒーターの定格は6.3V 200mAとのことです。

このとき、ドロップ電圧(下図のVdif)が3V近いLM317は、Vref=1.25Vより、9V電源の場合概算で4.75Vとなりヒーター電圧6.3Vを大幅に下回ってしまうので使えません。

LM317Circuit.jpg

仕方ないので、かなり高価ではありますが(千石で@700)ドロップ電圧が低い(Vdif<1V)LT1086を使うことにしました。LT1086は9V電源から真空管の定電流ヒーター電源を得るのに都合良い(概算値6.75V>ヒーター電圧6.3V)ので、自作エフェクタ的には(LTC1144みたいに)今後流行してほしい石のひとつであります。(なんだかリニアテクノロジー推しみたいになってる。まあ嫌いじゃないけど。)

LT1086Circuit.jpg


なおLT1086のVrefは1.25Vなので、真空管5703のヒーター電流200mAを得るためR5を1.25V/200mA≒6.2Ωの抵抗とします。当初サブミニチュア管は小さいからヒーター電流も少なくてよいのかと思ってましたが、ふつうのMT管と大して変わらなくて(例えば12AU7は1ユニット150mAなのでむしろ少ない)ちょっとがっかりです。そんなわけで放熱はしっかりやらないといけません。


Booster Sectionは、先にも書いた通りだいたいEP-2のバイパス回路です。元のEchoplexからするとB電源の電圧はかなり低くなっていますが、あえてR3,R4の定数はそのままとしています。
今回制作したVer.では、手持ちの部品の都合でC3を0.02μFにしています。また何を間違えたかC2を0.68μFにしていました。C2については回路図通り0.047μFだと遮断周波数fは720Hzなのに対して、0.68μFでは50Hzになります。(ローカットされなくなる)
今の出音が割と気に入っているので、結果オーライですがここは0.68μFのままにしておこうと思います。

自分がメインで使用しているFender Duosonic(1966)の高音が若干キンキン過ぎるので、オリジナルの回路に加えて、C4とVR2からなるハイカットトーンコントロール回路(回路図中赤色の部分)をつけました。ハイが落ちる分、相対的に中域に音の粘りが出るようで弾いていて気持ちよいです。


真空管の発熱(主にヒーターのせい)が著しいため放熱には注意したいです(結果として電圧降下が少なかったので、定電流回路の発熱はそれほどでもない)。自分は無理矢理HAMMOND1590Bに詰め込んだので、この辺りかなりシビアでした(下の写真みたいな感じ)。とはいえ真夏に一日中連続通電しても特に問題が起きない程度には丈夫です。

なお右下の写真のコンデンサはパスコンです。B電源がスイッチングノイズにまみれているので、パスコンがないと悲惨なことになります(例えば次段につないだアナログディレイのディレイ音が出ない、とか(実話です※))。回路図のR3の上側(電源から見たBoosterSectionの入り口)とR4の下側(電気の出口)を結ぶように最短の距離で配線しましょう。
(※多分ディレイの中のコンパンダがノイズで誤動作したんだと思う)

TubeEchoplexGuts.jpg TubeEchoplexBehind.jpg


ちなみにB電源まわりは、スペースの都合でBooster Sectionから少々離してこんな感じで実装しています。

TubeEchoplexPower.jpg


全体としてはこんな感じ。かなり詰め詰めですね・・・。ちなみにケースの横の穴は放熱用です。あまり綺麗ではないですが、ここだけ手の皮が剝けるくらい頑張りました。

<おまけ>
出音が気に入ったので、今回は塗装も頑張りました。こんな感じ。

PyroBooster_paint.jpg

<ちょっとした補遺>
世の中似たようなこと考える人がいるもんだな、と思わずにいられない他人の空似(回路的に)。これだけシンプルな回路だと、違う入り口から入っても同じ出口に辿り着いてしまうのか。
http://champ.chips.jp/sonota3/booster3.html

投稿者 fff : August 15, 2016 02:41 AM
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