Maxon OD-880(Original)

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スイッチとLEDがオリジナルと異なります。特にLEDは元々存在しないはずなので、元オーナーが増設したものと思われます。

投稿者 fff : 02:26 AM

Maxon OD-880(Original)

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1段目がボルテージフォロワでオペアンプ自体の入力インピーダンスが高く(741の場合、
オペアンプ自体の入力インピーダンスは無限大と言えるほど高くはない。下記参照)、
2段目の非反転増幅回路で約20〜120倍ほどゲインを稼いで(同時にC3,R6,R7+VR1
によるハイパスフィルタでローがカットされる)、D1,D2により±0.6Vの範囲でクリップ
され、続いて3段目の反転増幅回路で10倍に増幅された後(かつR10,R12,C6により
ハイカットされる)、最後にR13とVR2によりアッテネートされて出力される・・・ちょっと待った! 

つーか、0.6V×10=6Vなので、D1,D2でクリップされても3段目で10倍に増幅され
ちゃあ電源電圧9V(つまり±4.5V)を遙かに超えてしまって、結局3段目のオペアンプの
最大出力振幅でさらにクリップされてしまう!!! なんてこったい。
この辺がオペアンプ使用初期のエフェクタ(確か1977〜78年ぐらいに発売開始のはず)
ゆえの結果オーライさというべきか。

何はともあれ、Charが使っていることで有名なこのOverdrive、出音のもっさり感の所以は
もちろん当時のローファイオペアンプ(MotorolaMC1741CP,1976年ごろ)による部分が
大きいようではある(自作してみてそう思った)のですが、もしかしたら加えてこのあたりの
設計の微妙さ加減(たぶん設計ミス)も影響しているのかもしれません。

<以下ちょっとだけ数値計算>
LM741,AD741等の入力インピーダンスRinは、カタログ値よりTyp.2MΩ
R2を含めたボルテージフォロワ全体の入力インピーダンスはRin//R2=2MΩ//470kΩ≒380kΩ

C2,R3によるハイパスフィルタの遮断周波数fc=1/2πCR=338.6Hz
C3,R6,R7+VR1による似非ハイパスフィルタの遮断周波数fc=1/2π(C3)(R6)=720.5Hz
R10,R12,C6による似非積分回路(≒ローパスフィルタ)の遮断周波数fc≒1/2π(C6)(R12)
=3386Hz
C4//C5,R10あたりの時定数もC2,R3あたりと同程度には効きそうなんですが、
D1,D2の存在のため線形計算が難しいので省略。


<以下は全体に対する影響が僅少のため無視>
C1,Rinによるハイパスフィルタの遮断周波数fc=1/2πCR=8.9Hz
C7,R13+VR2によるハイパスフィルタの遮断周波数fc≒1/2πC7(R13+VR2)=20.4Hz

投稿者 fff : 01:45 PM | コメント (0)

Maxon OD-880(Original)

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抵抗:Allen-Bradley1/2W(CarbonComposite)
コンデンサ:Nissayポリプロピレン/ERO MKT1822/Blackgate等
OP-AMP:Motorola MC1741CP (DateCode:1983年?)

オリジナル機の外観/中身についてはこちらを、
回路図および回路動作についてはこちらを参照ください。


Allen-Bradley等のカーボン抵抗(carbon composite resistor)ですが、部品単体としての歪みやノイズが極悪で、かつ(被膜抵抗や巻線抵抗に比して)構造的にL分が少ないという特徴をもっています。適度に使うとアンプのトーンを上げた時にも耳の痛いキンキンした成分が丸まって かつ 音が抜けるような感じで聞こえてきます。単なる邪推ですが、歪みによる高調波の存在が、他の音の存在する中にあって基本波の輪郭を浮き上がらせている(カクテルパーティー効果を得やすくしている)のでしょうか。

個人的には、松下あたりのカーボン抵抗はダークに、Allen-bradleyは明るく、理研あたりは明るく上品に聞こえます。この辺メキシコ産がUSA産がとか言い出すときりがないですし好みの問題も多々ありますので、気に入ったならばテキトーなところで妥協しましょう。やらなければいけないことは他にもたくさんたくさんあります。

ERO MKT1822はSIEMENS MKT/WIMA MKS-2あたりと同様、フィルムの中では実装時に必要な体積が小さい点が他では得難い特徴です。自分の場合、コンパクトに作る際にはまずデフォルトでこのサイズを想定してレイアウトを決めて行きます。

松下のECM-Qエポキシ含浸コンデンサ(たぶん現行品)あたりを使ってみるのも面白いかも。エポキシ含浸コンデンサはオリジナル機にも使われているので、なんとなく満足感がある、というか。


MotorolaMC1741CPですが、他にもう1台金属被膜抵抗を使用したコピーも作って見た限りでは、これが独特のもっさりした質感に大きく影響しているような気がします。オリジナルとリイシューの出音の違いも(リイシューはTexasInst.のUA741CPを使用。回路は基本的に同じ)一部この辺に由来しそうな雰囲気です。(リイシューについては、コンデンサもなんとかしたいなあ)


スイッチは9V/±9Vの切り替えです。回路解析の項でも説明しましたが、どうも最終段のオペアンプにおいて出力最大電圧でクリップしちゃっているようなので、それを回避する機能を設けてみよう、という・・・。まあ最初はそこまで深いことは考えてなかった、というのが本音です。

なお、9V単電源からの±9Vの作成にはこちらに記した方法を使用しました。


以上で作成した機材を使ってみるに、歪みの軽い感じがシングルコイルに合う気がします。ツマミが2つだけなので、操作性は抜群です。使用するアンプの歪みが"使える音"である場合は、Gainを低め/Outputを高めで設定します。また、アンプの歪みが信用ならない場合&アンプシミュレータ的に使用する場合は、Gainを高め/Outputを低めで設定します。それだけです。

抜けが欲しい時は、必要に応じてアンプのハイ(またはプレゼンス)を上げます。ハイ(またはプレゼンス)を上げた際にも耳につくほどはキンキンせず(逆に言えば完全にはハイが上がり切らず)、オケの中にあって自己主張を強めるような効果が得られます。
(この辺少し手前味噌入っていてすみません)


<デモ音源>
Fenderストラトのフロントピックアップからの音をPowerbookの入力端子に直結して録ってみました。何となくアンプシミュレータっぽく録れたような気がします。
od-880_front.mp3
od-880_frontsolo.mp3

投稿者 fff : 02:38 AM | コメント (0)