Fuzzface概論1(ゲルマTrの特性)

ゲルマ版Fuzzfaceを自作するにあたり、実測値から推測される回路の動作および要求されるトランジスタの特性を明らかにする。その過程でこれまでまことしやかに語られてきた多くの迷信や伝説の類いを排除できれば幸いである。


<ゲルマニウムトランジスタの特性の測定について>
現在、fuzzfaceを自作しようとする場合に最も有用な記事はGEOのThe technology of the fuzzfaceであることは疑いようのないことでしょう。このサイトには、簡単な動作原理の説明,トランジスタの選別法 および さまざまなfuzzfaceの亜種の紹介などが記されています。

今回は、まずGEOに紹介されている方法をもとにIces, Iceo, hFEを測ってみたいと思います。
Iceo:ベースをオープンにしてコレクタ-エミッタ間に電圧をかけた時に流れる電流。(漏れ電流と呼ばれることもあるらしい)
Ices:ベースをエミッタと短絡させてコレクタ-エミッタ間に電圧をかけた時に流れる電流
(これらIceo,Icesはコレクタ遮断電流とも呼ばれる)


なぜGEOの方法においてhFEだけでなくIceoも測定しているのかというと、トランジスタの動作領域を考えた時に、取り出せる電流はIceo以下にはならない(遮断領域)ことを踏まえてのことだと思います(逆にどんなに出力電圧を取り出そうとしても、Vceは飽和電圧Vces以下にはならない)。さらにGEOでは、このIceoを差引いたIcを用いて算出したhFEを*real*hFE(「真のhFE」)と表現しています。この「真のhFE」を使用したスクリーニング法がどの程度有効かは、後ほど検証および評価したいと思います。

なおトランジスタの動作領域の詳細は、NECのFAQ「tr-1101 動作領域」の項をご覧ください。

今回Icesを測定する意図は、Iceoが流れている状態ではVbeが0Vより下降しているもの(PNPトランジスタの場合)と推測し、それではベースの電位を強制的に0Vにしたらどうなるかを見たかったという興味本位の理由です。同様の理由で、Iceo および hFEを測定した時のVbeもそれぞれ記録しておくこととします。

<図1:今回測定に使用する回路>

上図はGEOで紹介されているIceoおよびhFEの測定回路にIcesを測るためのSW1を追加した回路です。実験手順は以下のとおりになります。
1.最初にSW1を押した状態で数分室温になじませて、値が落ち着いたところでコレクタ電流Ices(実際は電源-コレクタ間に設置した電圧計。以下同じ)の値を読む。
2.SW1を離してコレクタ電流Iceoの値を読む。同時にVBEを測っておく。
3.SW2を押してコレクタ電流Icの値を読む。同時にVBEを測っておく。

この回路定数で測定すると、以下のようにhFEが直読できることになります。
 hFE=上記3で読んだメーターの値×100
 真のhFE=(上記3で読んだメーターの値-上記2で読んだメーターの値)×100

逆にIceoについては、下記のように算出する必要が生じますが。
 Iceo=上記2で読んだメーターの値/Rc(=2.5kΩ)

上記の測定条件は、(ゲルマTrの大きなIceoのため)IceoとIcの値が近すぎて「純粋な」hFE測定には不向きです。ただ、実際のFuzzfaceの1段目トランジスタのベース電流に条件が近い(実際のRfの両端の電位差は概ね0.2~0.8V程度)ので、Fuzzface用のトランジスタのスクリーニングに特化した回路である、とは言えます。


Iceo,Icesについて、上図の回路にはコレクタに電流検出用の抵抗(Rc=2.5kΩ)が入っているため、正確にはVceが一定の状態での測定とはなりませんが、Rcによる電圧降下は概ね1V程度であり、Vceが多少変動したところで測定結果に与える影響は軽微であるため(詳細な影響度合いについては、下記<測定時のVceの大小によるIceo測定結果の変化>参照)、ここではVce=約8Vと割り切って考えることにします。hFEについては、Ib(=9V/2.2MΩ≒4.1μA)を一定とした測定と考えることにします。本来はコレクタ電流が一定の状態で測定すべきですが、こちらも今回は簡易的な測定と割り切っておきます。
(今回のように量を捌く必要がある場合にはこういう機械が欲しくなりますね)


以下2SB370のAランクを41個測定した結果です(うち30個は同一ロット)。気温20℃
時間があったら他の品番でも測定したいと思います。


<図2:2SB370 AランクのIcesのばらつき>



<図3:2SB370 AランクのIceoのばらつき>



<図4:2SB370 AランクのhFEのばらつき>



<図5:2SB370 Aランクの「真のhFE」のばらつき>


Ices,Iceoについては全体的に少ないように思います。まずまずのロットですね。
hFEについてはカタログ値よりは多少ばらついているようですが、測定条件が異なる(Vce=-1V,Ic=-150mA)こと および経年劣化を考えると、こちらもまあまあの結果だと思います。


次に各パラメータ間のピアソンの積率相関係数を見ます。この相関係数が高ければ高いほど互いのパラメータの間に何らかの相関関係があることが類推されます。


<図6:Ices vs Iceo 相関係数:0.695>



<図7:Iceo vs hFE 相関係数:0.939>



<図8:Iceo vs 「真のhFE」 相関係数:0.462>

図7の結果から、この条件(hFE測定時のIb=4μA)ではIceoとhFEの相関が非常に高いことが見てとれます(hFE測定時のIbを増やした場合についても、相関は多少落ちるものの概ね同様の結果が得られています。下記<測定時のIbの大小によるhFE測定結果の変化>を参照)。何らかの理由でコレクタからベースに漏れた電流がエミッタに流れてhFE倍されてコレクタ電流として現れているイメージでしょうか。また、図6の結果から、IcesとIceoの相関もかなり高いようです。図中著しく離れた異常値(たぶん漏れ電流が多い不良品)を除けば、さらに0.1ぐらい相関係数がUPします。以上に比べると多少薄いですが、Iceoと「真のhFE」との相関も見られるようです。



<図9:2SB370 AランクにおけるIceo測定時のVBEのばらつき>

Iceo測定時にどの程度VBEが0Vからシフトするのかを測定しました。平均で63.0mV程度下降するようです。このように漏れ電流によって(勝手に)自己バイアスしているため、mosrite fuzzriteの1段目やTonebenderMkIIの1段目のように明示的にバイアスをかけなくてもトランジスタが動作します(ただし入力振幅が小さくないと信号がひずむ)。これはシリコントランジスタではありえない特性です。


<図10:hFE測定時のVBE vs hFE (相関係数:0.183)>



<図11:hFE測定時のVBE vs 「真のhFE」 (相関係数:0.386)>


ついでに、hFEとVBEの相関を見ておこうと思います。今回はhFEのばらつきが少なかったので、意味のある相関が出たかどうかはかなり怪しいです。ただ何故か図11の「真のhFE」 vs hFE測定時のVBE(mV)の方が相関が若干高いように見えます。このあたりは要再調査でしょう。


(ゲルマTrの温度変化に対する特性(Iceo, hFE)変化)
「'88年度版最新トランジスタ規格表」にも記されているように、コレクタ遮断電流Icboは温度によっては10℃上昇するごとに約2倍程度と、非常に大きく変わります。Iceoについても同程度の温度変化に対する反応を示すと思われます。



<図12:Temp vs hFE (Sample21)>


<図13:Temp vs 「真のhFE」 (Sample21)>


<図14:Temp vs Iceo (Sample21)>


図12,図13より、hFEについては温度増加に伴い比例的に値が増大しているように見えます。図12において温度が高い時に増加量が多いように見えるのは、Iceoの増大によるものであることが図13の結果より判断できます。また図14より、Iceoについてはおおむね指数関数的に値が増大しているようです。



<図15:Temp vs hFE (Sample21, Ib=40μA)>

hFEの測定に対するIceoの影響を無視できる程度に少なくするためにIbを40μAにして測定した結果が図15になります。この結果ならばhFEが比例的に増大していることが納得していただけることと思います。逆にFuzzfaceの回路定数が(コレクタ電流が低くなるため)Iceoを無視できないレベルに設定されている、ということも言えるとは思います。

<測定時のVceの大小によるIceo測定結果の変化>
ゲルマTrのサンプル3個について、測定時のVceとIceo測定結果との関連から、Vceの違いによってIceoがどの程度変化するのかを見ます。なお下記でVce≒8Vとなっている測定結果は、<図1:今回測定に使用する回路>によるものです。

Vce_Ic.GIF
<付表1:Vce vs Iceo at 22℃>

上記結果より、当該測定条件範囲(Vce=0.5~8V)ではVceにかかわらずIceoはほぼ一定となっています。つまり実際のFuzzfaceにおいても、周囲温度が同一ならば今回のIceoの測定結果とほぼ同レベルの漏れ電流が発生していると考えることが出来そうです。

<測定時のIbの大小によるhFE測定結果の変化>
Ib=4μA および 40μAのそれぞれの条件でhFEを測定します。各個体にはラベルをつけて示しておきます。特記なき個体はすべてランクAです。なお、Ib=40μAの測定には、<図1:今回測定に使用する回路>のRbを220kΩに、Rcを250Ωにした回路を使用します。



<付図1:Iceo vs hFE, Ib=4μA, 相関係数:-0.872>



<付図2:Iceo vs hFE, Ib=40μA, 相関係数:-0.462>

Iceoについては、Rcによる電圧降下を除いてほとんど条件は変わらないので、概ね同様の傾向を示しています。ただ、hFE測定時のIbが10倍になっているので、Icも概ね10倍程度となり、そのためhFE測定におけるIceoの影響が1/10程度に減ります。
またhFE測定時の電流が、規格表における測定条件(Vce=-1V,Ic=-150mA)により近くなっているため、ランクAとランクBの違いがよりはっきり現れているようです。


<寄生容量の測定(かなり乱暴)>
動作していない状態での静的寄生容量を、手持ちのカスタムLCRメータELC-133Aを直接つないではかってみます。かなり乱暴であることはわかっています。はい。でも何らかの傾向がつかめたら面白いかな・・・という感じで・・・。


<付表2:ELC-133Aを使ったBE間およびCB間の寄生容量の測定>

図中、B+E-はベースを+(赤端子)にエミッタを-(黒端子)につないだことを意味します。
B+E-とB-E+(および B+C-とB-C+)で若干値が違っているのは、トランジスタの極性の影響と思います。ちなみに上記と同様にCE間を測定してみたのですが、計測値がランダムにゆれて測定自体がうまくいきませんでした。

いずれのSampleも、10kHzでBE間では350pF程度、CB間では500~550pF程度の値を示しています。’88年度版最新トランジスタ規格表を斜め読みするに、このクラスのゲルマの場合、fae(エミッタ接地増幅回路において、電流増幅率が3dB低くなる周波数)は10~20kHz程度と目されるので、大雑把なモデルとしてはわりといい線行っているのではないかと思います。(興味のある方はspiceでシミュレーションしてみてください)

投稿者 fff : 02:44 PM | コメント (0)

Fuzzface概論2(机上回路解析)

ここでは概論1とは別のアプローチによりゲルマTr VersionのFuzzfaceの動作に迫ろうと思います。ゲルマTrの回路を無理やりDC解析することにより回路の大まかな動作を考えます。


<図1:或るFuzzfaceの回路>

Fuzzfaceの回路定数は、とりあえず上図をベースに考えます。
なおRFとして100~150kΩ,RC2_1として470Ω or 330Ω等種々のVersionが存在するようです。RC2_1については、guitar magazine august2003, Vol.14, No.4のpp60-61の「SECRET SMILE」 というFuzzface特集を注意深く見ると概ねゲルマ=470Ω,シリコン=330Ωとなっているように見えますが、その他のVersionが存在しないことを保証できるものではありません。



<図2:DC解析用に書き直したFuzzfaceの回路図>

RE2に流れる電流は、Ie2-Ifなので、RE2の両端の電位差はRE2・(Ie2-Ib1)です。
Q1のコレクタとエミッタの電位差をVCE1,コレクタとベースの電位差をVCB1,ベースとエミッタの電位差をVBE1Q2のベースとエミッタの電位差をVBE2とすると、

 VCE1=VCB1+VBE1=VBE2+RE2・(Ie2-Ib1)

Q1,Q2はともにゲルマなので、VBE1≒VBE2と考えることができます。よって、

 VCB1≒RE2・(Ie2-Ib1)

おおざっぱに言えば、VCB1はRE2の両端の電圧とだいたい等しいと言えます。VCB1が小さくなりすぎるとQ1は飽和するので、Q1が飽和するかしないかは、RE2に流れる電流の大小によって決まる(RE2に流れる電流が少なくなるとより飽和に近くなる)ことがわかります。


次にRE2の両端の電位差VRE2を考えます。

 VRE2=RE2・(Ie2-Ib1)=Rf・Ib1+VBE1
 RE2・Ie2-VBE1=(Rf+RE2)・Ib1

 ∴ Ib1=RE2/(Rf+RE2)・Ie2-VBE1/(Rf+RE2)

ゲルマのVBEは0.1V程度なので、思い切って無視してしまうと、

 ∴ Ib1≒RE2/(Rf+RE2)・Ie2

実際にはRE2=1kΩ,Rf=100kΩなので、大体Ib1はIe2の1/100ぐらいと考えられます。



<図3:Q2の動作を理解するために心の眼で見たDC解析用Fuzzface回路図>

ここでQ2の動作について考えると、上図のようにQ2のベース電位はRC1による電圧降下によって決定されることがわかります。Vcc→RC1→Q2→RE2→GNDのラインを考えてみると、

 Vcc=RC1・(Ic1-Ib2)+VBE2+RE2・(Ie2-Ib1)
 Vcc-VBE2=RC1・(Ic1-Ib2)+RE2・(Ie2-Ib1)
 RE2・(Ie2-Ib1)=Vcc-VBE2-RC1・(Ic1-Ib2)

ie2≫Ib1, Ic1≫Ib2とすると、

 RE2・Ie2≒Vcc-VBE2-RC1・Ic1

Ib1≒RE2/(Rf+RE2)・Ie2, Ic1=hFE1・Ib1+Iceo1より(2009/5/16追記:ゲルマの場合使用条件によってはIceoが無視できないほど大きくなるため、考慮を追加)

 RE2・Ie2≒Vcc-VBE2-RC1・Ic1
 RE2・Ie2≒Vcc-VBE2-RC1・hFE1・(RE2/(Rf+RE2)・Ie2+Iceo1)
 RE2・Ie2≒Vcc-VBE2-RC1・hFE1/(Rf+RE2)・RE2・Ie2-RC1・Iceo1
 RE2・Ie2+RC1・hFE1/(Rf+RE2)・RE2・Ie2≒Vcc-VBE2-RC1・Iceo1
 RE2・Ie2(RC1・hFE1/(Rf+RE2)+1)≒Vcc-VBE2-RC1・Iceo1

 ∴ Ie2≒((Vcc-VBE2-RC1・Iceo1)/RE2)/(RC1・hFE1/(Rf+RE2)+1)

VBE1=VBE2=0.1Vとして具体的な定数を代入してみると、

 Ie2≒((9-0.1-33k・Iceo1)/1k)/(33k・hFE1/(100k+1k)+1)
=(0.0089-33・Iceo1)/(33/101・hFE1+1)
=(0.0089-33・Iceo1)・(101/33)/(hFE1+101/33)
=(0.0272-101・Iceo1)/(hFE1+3.06)

またVCB1≒RE2・(Ie2-Ib1) , Ie2≫Ib1より、

 VCB1≒RE2・(Ie2-Ib1)≒RE2・Ie2
 VCB1≒1k・(0.0272-101・Iceo1)/(hFE1+3.06)

 ∴VCB1≒(27.2-101k・Iceo1)/(hFE1+3.06)

この式より、hFE1が大きくなればなるほどVCB1は小さくなります。
(hFEとIceoは正の相関があり、かつIceoの増大はhFEの増大の効果を阻害しない)
そしてVCE(=VCB+VBE)が飽和電圧を下回ると、Q1が飽和してマトモな音が出なくなります。

次にQ1のコレクタ電位(=Q2のベース電位)を考えます。前述のようにQ2のベース電位はRC1を流れる電流によって一意的に決まり、

 Vcc-VCE1=RC1・(Ic1-Ib2)

Ic1≫Ib2 より、

 Vcc-VCE1≒RC1・Ic1
 Vcc-VCB1-VBE1≒RC1・Ic1

 ∴VCB1≒Vcc-VBE1-RC1・Ic1

仮にVCB1がゼロになったとすると、Ic1は

 Vcc-VBE1-RC1・Ic1=0
 Vcc-VBE1=RC1・Ic1
 Ic1=(Vcc-VBE1)/RC1

ゲルマTrの特性よりVBE1≒-0.1Vなので、Vcc=-9V, RC1=33kΩ, Ic1=hFE1・Ib1+Iceo1より(2009/5/16追記:ゲルマの場合使用条件によってはIceoが無視できないほど大きくなるため、考慮を追加)

 Ic1=hFE1・Ib1+Iceo1=8.9V/33kΩ≒0.27mA

つまり、Ic1=hFE1・Ib1+Iceo1<0.27mAということになります。概論1の結果より周囲温度が同等ならばVceの大小にかかわらずIceoが同程度となることが判明しているので、少なくともQ1についてはIceoが0.27mAを超える個体は使用できないことがわかります。


またQ2のVCE2を考えると、Ie2≒Ic2より、

 VCE2=Vcc-RC2・Ic2-RE2・Ie2
 ∴VCE2=Vcc-(RC2+RE2)・Ie2

仮にVCB2がゼロになったとすると、VCE2=VCB2+VBE2なので、

 VBE2=Vcc-(RC2+RE2)・Ie2
 Vcc-VBE2=(RC2+RE2)・Ie2
 ∴Ie2=(Vcc-VBE2)/(RC2+RE2)

ゲルマTrの特性よりVBE2≒-0.1Vなので、Vcc=-9V, RC2=8.2kΩ+470Ω=8.67kΩ, RE2=1kΩより、

 Ie2=8.9V/(8.67kΩ+1kΩ)≒0.92mA

よって、Ie2<0.92mAということになります。Q1の場合と同様に考えると、Q2についてはIceoが0.92mAを超える個体は使用できなさそうです。

また、VCE2=Vcc-(RC2+RE2)・Ie2, Ie2≒(0.0272-101・Iceo1)/(hFE1+3.06) および Vcc=-9V,RC2=8.2kΩ+470Ω=8.67kΩ, RE2=1kΩより、

 VCE2=Vcc-(RC2+RE2)・(0.0272-101・Iceo1)/(hFE1+3.06)
 VCE2=9-(8670+1000)・(0.0272-101・Iceo1)/(hFE1+3.06)
 ∴VCE2=9-(263-977k・Iceo1)/(hFE1+3.06)

VCE2=VCB2+VBE2 かつ ゲルマTrの特性よりVBE2≒0.1Vなので、

 VCE2=VCB2+VBE2=9-(263-977k・Iceo1)/(hFE1+3.06)
 VCB2≒8.9-(263-977k・Iceo1)/(hFE1+3.06)

上記の結果より、hFE1が減少するとVCB2が減少して飽和に近づくことが判明します。
仮にVCB2がゼロになったとすると、

 8.9≒(263-977k・Iceo1)/(hFE1+3.06)
 hFE+3.06≒(263-977k・Iceo1)/8.9
 ∴hFE1≒26.5-110k・Iceo1

hFE1が小さい個体は概ねIceoも小さいことを考慮してIceo1を無視すると、

 ∴hFE1≒26.5

以上より、少なくともhFE1は概ね30程度以上はないとQ2が飽和します。

これまでの解析結果を定性的/定量的にまとめてみる。(2009/5/16記載書き直し)
1.VCB1≒RE2・(Ie2-Ib1),Ie2≫Ib1よりVCB1はRE2の両端の電圧とだいたい等しくなるように平衡し、またVCB1はIe2に概ね依存する。
2.Ie2≒(0.0272-101・Iceo1)/(hFE1+3.06), Ie2≒Ic2より、Ie2 および Ic2はhFE1が小さい個体では相対的に大きくなる。
3.VCE2=Vcc-(RC2+RE2)・Ie2より、Ie2(および Ic2)が増大するとRC2とRE2に流れる電流が増えることからそれぞれの両端の電圧も大きくなるためVCE2が圧迫され飽和状態に近づく。左記結果より少なくともhFE1は概ね30程度以上はないとQ2が飽和する。
5.逆にVCB1≒(27.2-101k・Iceo1)/(hFE1+3.06)より、hFE1が増大するとVCB1は減少して飽和状態に近づく。
6.Ic1=hFE1・Ib1+Iceo1=8.9V/33kΩ≒0.27mAより概ねIceo1が0.27mAを超えるとVCE1が圧迫されQ1が飽和する。ゲルマの場合20℃あたりでIceoが0.2mA程度あることも(特に電力増幅段の石の場合)少なくないので、特にQ1についてはゲルマTrのIceoの指数関数的温度特性も考慮するとそれなりに厳しい選別が必要となることがわかる。
7.3,5および6の結果より、Q1のhFEおよびIceoが外気温により大きく増減することが、ゲルマ版Fuzzfaceの本質的な不安定さの原因であると考えられる。一方、Q1に比してQ2のhFEおよびIceoは回路動作の面では大勢に影響を与えていない。

投稿者 fff : 01:40 PM | コメント (0)

Fuzzface概論3(測定結果)

Fuzzface概論2(回路解析)における結論を改めて以下に整理しておく。

○以下の式により1段目のトランジスタのhFEの大小によってQ1が飽和したりQ2が飽和したりすることが判明した。
  VCB1≒27.2/(hFE1+3.06)
  Ie2≒0.0272/(hFE1+3.06)
○Iceoについて、少なくともQ1にはIceo<0.27mAの(同様にQ2にはIceo<0.92mAの)個体を使用しないと、負荷線上の領域がすべて遮断領域となって動作領域がなくなってしまう。ゲルマの場合20℃あたりでIceoが0.2mA程度あることは普通なので、特にQ1についてはゲルマTrのIceoの指数関数的温度特性も考慮するとそれなりに厳しい選別が必要となることがわかる。
○1段目トランジスタのhFEおよびIceoが外気温により大きく増減することが、ゲルマ版Fuzzfaceの本質的な不安定さの原因である。
○1段目に比して2段目のトランジスタのhFEおよびIceoは回路動作の面では大勢に影響を与えていない。

これら机上回路解析の結果が実際の回路動作にどの程度合っているかを実際の測定結果をもとに評価しようと思います。


まず、今後の実験で使うトランジスタの個々の特性を再度測定します。今回は周囲温度(缶表面の温度)を測定しておいて、実際の回路での測定をなるべく同じくらいの温度で実施するよう配慮するようにします。なお、後々の測定のためにそれぞれの個体にラベルをつけておきます。あと、比較対照のためBランクの個体(Sample16)も入れておきます(その他サンプルはすべてAランク)。


<図1:Iceo vs hFE (Temp: 18.0~18.7℃)>



<図2:Iceo vs 「真のhFE」 (Temp: 18.0~18.7℃)>



<概論2の図1:或るFuzzfaceの回路>(再録)

次に上記回路の中にA,B,C,Dで記した点のアースからの電位を測定し、実際のFuzzfaceの回路中でのVCB1, VCE1, VCE2を求めます。それらの値と上で測定したhFE, Iceoとの相関 および DC解析で求めた数式による算出値との比較をします。


<図3:VCB1 vs hFE1 (Q2:Sample27)>


<図4:VCB1 vs 「真のhFE1」 (Q2:Sample27)>

上記のようにQ2をSample27に固定した条件においては、Q1のVCBとhFE(および「真のhFE」)とは非常に高い負の相関を示しています(図3)。hFEと「真のhFE」とを比較すると、わずかに「真のhFE」との相関が高くなっています(図4)。



<図5:VCE1 vs hFE1 (Q2:Sample27)>



<図6:VCE1 vs 「真のhFE1」 (Q2:Sample27)>

VCB1と同様、Q1のVCEとhFE(および「真のhFE」)とは非常に高い負の相関を示しています(図5)。こちらもhFEと「真のhFE」とを比較すると、わずかに「真のhFE」との相関が高くなっています(図6)。また実測値と算出値とのずれについても、「真のhFE」基準の方がよりよく合っているように見えます。同一型番 かつ 同一ランクの個体の間で選別を行ったため、元々の個体同士の値のばらつきが小さく、明確に断言できるほどの差は生じていませんが、これらの結果より「真のhFE」を基準に選別を行った方がより安定した結果を得られそうな雰囲気は感じ取れます。

上記に引き続いて、もう少し温度が高い条件(~22℃)でも状況を見てみようと思います。温度が高くなるとhFEも漸増しますがIceoの方が指数関数的に大きくなるので、Iceoと動作との関係において有意な結果が見られると思います。



<図7:Iceo vs hFE (Temp: 21.9~22.6℃)>


<図8:Iceo vs 「真のhFE」(Temp: 21.9~22.6℃)>


なお図7,図8中には、当該条件(周囲温度:21.9~22.6℃)で実際のFuzzfaceの回路のQ1として組み込んだ(Q2:sample27)際の動作状況をマーカーの色で示しています。色の内訳は以下の通りです。
(2009.5.12追記:Iceoが大きくなるにつれて、特に高音弦のサスティンに影響が出ています。元のコメントはちょっと表現が極端で不適切だったので訂正)
 赤色:高音がブチブチ切れて楽器としてキビシイ。
  Q1:sample11 ⇒ 
 緑色:高音のサスティンが頼りない。
  Q1:sample12 ⇒ 
 青色:楽器としてまともに動作している。
  Q1:sample15 ⇒ 
 黒色:Sample27(Q2として使用のため、Q1としてのテストは行っていない)
(とりあえず上記においては音色面での評価はしていません)

概論2(机上回路解析)の結果よりIceoが0.27mAを超えた個体はQ1として使えないことが判明しておりますが、上記結果を見ると概ね回路解析の結果と符合しているように見えます。



<図9:VCE1 vs hFE (Q2:Sample27, Temp: 21.9~22.6℃)>



<図10:VCE1 vs 「真のhFE」(Q2:Sample27, Temp: 21.9~22.6℃)>


<図11:VCB1 vs hFE (Q2:Sample27, Temp: 21.9~22.6℃)>



<図12:VCB1 vs 「真のhFE」(Q2:Sample27, Temp: 21.9~22.6℃)>


やはりQ1のVCB(もしくはVCE)とhFE(および「真のhFE」)とは非常に高い負の相関を示しています(図9,図10)。この結果においては「真のhFE」よりhFEの方が相関が高くなっています(図11,図12)。ただマーカーの色で示される動作状況については、hFE, VCE および VCBとの関連は比較的薄いように見えます。

なおVCB1,VCE1ともに、Iceoとの間には特筆すべき相関はありませんでした。(not shown)



<図13:VCE2 vs hFE1 (Q2:Sample27)>



<図14:VCE2 vs 「真のhFE1」 (Q2:Sample27)>

今度はQ2をSample27に固定した条件において、Q1のhFEがVCE2に与える影響を測定します。Q1のhFEが上がれば上がるほどVCE1が上昇し、そのためQ2のエミッタの電位が上がってRE2の両端にかかる電位差が大きくなることによって、結果としてQ1のhFEとVCE2は正の相関を持つようになります(図13)。こちらも「真のhFE」との相関の方がより強い傾向が見られ、実測値と算出値とのずれについても、「真のhFE」基準の方がよりよく合っているように見えます(図14)。


<図15:VCE1 vs hFE2 (Q1:Sample17)>



<図16:VCE1 vs (real)hFE2 (Q1:Sample17)>

一方、Q2のhFEが回路動作に与える影響はQ1のhFEほどは大きくないようです。上記のようにQ1をSample17に固定した条件では、Q2のhFE(図9),「真のhFE」(図10)に因らずVCE1はほぼ5V強となっています。ただ、図9を注意深く観察すると、Q2の漏れ電流Iceoが大きい場合はほのかにVCE1が少なくなる傾向はありそうに見えます。



<図17:VCE2 vs hFE2 (Q1:Sample17)>



<図18:VCE2 vs (real)hFE2 (Q1:Sample17)>


またVCE2についても、Q2のhFE(図17),「真のhFE」(図18)に因らずほぼ5V弱となっています。こちらはQ2の漏れ電流Iceoとの有意な相関を見ることはできていません。


以上の測定結果より、次の結論が得られます。

○DC解析の結果は大雑把とはいえあながち間違ってもなさそう。
○hFEをベースに選別するより「真のhFE」をベースに選別した方が多少よいかも。少なくともIceoは測定しておいた方がよい。
○動作するかしないかという観点で見た場合、Q1のhFEは60-130(「真のhFE」ベースで50-80)ぐらいがベスト。
○Iceoの大小は、特に1段目のトランジスタの動作領域に直接影響を及ぼしているようである。Iceoは温度によって指数関数的に増加するので、温度の変動による動作への影響が相対的に大きい。
○動作するかしないかという観点で見た場合、Q2のhFEおよびIceoはQ1ほどクリティカルではない。


なお、以下は個人的な感想なのでエビデンスはないです。
○VCE1が700超になる組み合わせの音はあまり好きではなかった。

<1段目トランジスタのhFEが小さい場合に何が起こるか>
1段目にhFEが小さいトランジスタを使用して(ここでは2SB422の手持ちのロットを使用)一連の測定をして見ます。まずはIceoとhFEの関係を見ます。



<付図1:Iceo vs hFE(2SB422, Temp: 22.0~22.1℃)>


<付図2:Iceo vs 「真のhFE」(2SB422, Temp: 22.0~22.1℃)>

周囲温度:22.0~22.8℃での実際のFuzzfaceの回路のQ1として組み込んだ(Q2:sample45)際の動作状況をマーカーの色で示しています。色の内訳は以下の通りです。
(2009.5.12追記:hFEが小さくなるにつれて、全体のサスティンに影響が出ています。)
 赤色:音がブチブチ切れて楽器として使い物にならない。
  Q1:sample24 ⇒ 
 緑色:クリップがハードすぎて楽器としてどうかと思う。
  Q1:sample49 ⇒ 
 青色:楽器としてまともに動作している。       
  Q1:sample98 ⇒ 
 黒色:Sample45(Q2として使用のため、Q1としてのテストは行っていない)
(とりあえず上記においては音色面での評価はしていません)

概論2(机上回路解析)の結果よりhFEが30を下回る個体はQ1として使えないことが判明しておりますが、上記結果を見ると予想通りhFEが低いサンプル(Sample24,25,28)では増幅回路としてまともに動作していないように思われます。



<付図3:VCE1 vs hFE1(2SB422, Temp: 22.0~22.8℃)>



<付図4:VCE1 vs 「真のhFE1」(2SB422, Temp: 22.0~22.8℃)>



<付図5:VCE2 vs hFE1(2SB422, Temp: 22.0~22.8℃)>



<付図6:VCE2 vs 「真のhFE1」(2SB422, Temp: 22.0~22.8℃)>


VCE1およびVCE2とhFE1(および「真のhFE1」)との関連を見てみると、もう少し詳細な状況がわかります(付図3~6)。この結果よりhFEが低いサンプル(Sample24,25,28)ではVCE1, VCE2ともに(2007.10.04誤記訂正)VCE2が飽和領域に入ってしまい、信号がまともに増幅されていない様子がわかります。いくら歪みモノとはいえ、ある程度はリニアに増幅されないと楽器として使用に耐えないというごく当たり前のことが示されているように感じます。

投稿者 fff : 12:30 PM | コメント (0)

Fuzzface概論5(温度変化考察)

前の記事が雑多な情報の羅列っぽくなってて気に入らないので
ちょっと再構成を試みます。すいません。

【Q1:ゲルマTr版Fuzzfaceはなぜ周囲温度の変化に弱いのか】


<図1:ゲルマニウムトランジスタにおけるVce-Ic図>

A1:ゲルマニウムトランジスタの動作において、周囲温度が上昇した場合にはIceoとhFEが増大します(Fuzzface概論1:ゲルマTrの温度変化に対する特性(Iceo, hFE)変化の項参照)。図1で示すように、IceoはゲルマTrの場合比較的大きく、 かつ温度上昇に伴いIceoは指数関数的に増大し、hFEは比例的に増大します。正弦波入力時の1石エミッタ接地増幅による出力を図2に模式的に例示してみます。

<図2:動作点Bにおける波形のつぶれ方(例)>

Iceoが実線→点線のように増加すると、図1の負荷線上の動作領域(背景が白い部分)と遮断領域(背景が黄色い部分)との境界Aが①→のように移動して動作領域が狭くなります(図3)。

<図3:動作点BにおいてIceoが①→のように増大した際の波形のつぶれ方(例)>

また、hFEの増大により、図1中の動作点Bが②→のように移動します(図4)。

<図4:動作点Bが②→のように移動した際の波形のつぶれ方(例)>

このとき、Iceoの増大によりAが飽和領域(背景が緑の部分)との境界Cに達すると動作領域がまったくなくなってしまいます(not shown)し、また、hFEの増大によりBが飽和領域に入るとAB級どころかB級増幅すらしなくなります(図5)。

<図5:動作点が飽和領域を超えた際の波形のつぶれ方(例)>

ただ、前述のとおり温度上昇による影響はhFEよりIceoの方がはるかに大きく、特にFuzzfaceの1段目のようにコレクタ電流のオーダーがIceoに近い場合にはIceoの増大による動作領域の減少の方が、(動作する/しないの点では)より支配的だとは言えると思います。
(ゲルマTrのIceoの大きさを鑑みると、個人的にはFuzzfaceのコレクタ抵抗の大きさ(33kΩ)は疑問です。Tonebenderのようにもう少しこのコレクタ抵抗が小さければ(10kΩ)、使えるトランジスタの幅がかなり広がるように思うのですが)

上記結果をを踏まえて、参考までにFuzzface回路全体における正弦波入力に対するクリップの概要を模式的に示してみます(図6ー 図8)。図6は1段目および2段目のトランジスタの動作点がともに動作領域にある場合、図7は1段目のトランジスタが飽和している場合、そして図8は2段目のトランジスタが飽和している場合 を示したものです。

前述のように、図7の1段目トランジスタの飽和は温度上昇により1段目トランジスタのhFEが著しく増大した(もしくはもともと高いhFEのトランジスタを使用した)場合に発生し、また図8の2段目トランジスタの飽和は温度下降により1段目トランジスタのhFEが著しく下降した(もしくはもともとhFEが低いトランジスタを使用した)場合に起こります。


<図6:Fuzzfaceにおいて1段目および2段目のトランジスタがともに動作領域にある場合の波形クリップの様子>


<図7:Fuzzfaceにおいて1段目のトランジスタが飽和領域にある場合の波形クリップの様子>


<図8:Fuzzfaceにおいて2段目のトランジスタが飽和領域にある場合の波形クリップの様子>

図8において1段目トランジスタの波形の中心を図6、図7における波形の中心に比べて上側にシフトさせて描画している理由は、2段目トランジスタが飽和するような状況では(飽和しない状況に比べて)1段目のトランジスタが飽和から比較的遠い状態で動作していることによるものです。
(詳細はFuzzface概論3(測定結果)の<1段目トランジスタのhFEが小さい場合に何が起こるか>における付図3−付図6を参照)


実際には上記に加えて入力のカップリングコンデンサ(2.2μF)と入力インピーダンス(ほぼ1段目トランジスタのhieのオーダーなので1〜数kΩ)により形成されるハイパスフィルタにより入力前に数十Hz以下の低域がカットされ、トランジスタ自体の高域特性の悪さにより十数kHz以上の高域がカットされ(波形の平らな部分が右肩下がりになる)、さらに出力のカップリングコンデンサ(0.01μF)と次につなぐ機器の入力インピーダンスにより形成されるハイパスフィルタにより低域がカットされるはずです。


現在Fuzzfaceをコピーしようとする場合には、回路定数を変えずにバカ正直に作ってトランジスタを選別しまくるよりは、持っているトランジスタに合わせてコレクタ抵抗を調整するか、もしくは下図9のようにコレクタ抵抗を可変(図中赤で示すように固定抵抗(RC1:10kΩぐらい)と可変抵抗(VR3:20kΩぐらい)を直列につなぐ。RC1の固定抵抗を減らし過ぎると抵抗値を下げた時に電流が流れ過ぎて可変抵抗が焼けるのでNG)にするのがいいと思います。

Fuzzface_MOD.gif
<図9:バイアスを調整できるように少しだけ改良したFuzzfaceの回路図>

この部分を可変抵抗化しておくと周囲温度が変化した時にバイアスのセッティングを調整できるので多少便利かもしれません。ただその場合、可変抵抗をひねった時にガリガリ言うようになります(どこかの自作記事みたいに)が、その辺は確信犯なので許してください。

もう少し回路を複雑にして良いのであれば、こちらのFuzzface概論X(結論)の回路をおすすめできると思います。ゲルマトランジスタ自体にIcboの変化を補償させているので、hFEに対する補償までは対応できていないものの、図9の回路よりは温度変化に強いはずです。できれば真冬の野外とかで使ってみて効果を試してみたいですね。

投稿者 fff : 12:43 AM

Fuzzface概論6(実測波形観察1)


<概論3 付図2:Iceo vs 「真のhFE」(2SB422, Temp: 22.0~22.1℃)>

Fuzzface概論3でIceoと「真のhFE」との相関を示したサンプルの一部(2SB422_Sample24, 49, 98)をQ1に用いて(Q2は2SB370_Sample27)、実際のギター入力(1弦12フレットのハーモニクス(E) および 3弦12フレットのハーモニクス(G))に対する出力波形を観察してみます。ここでハーモニクスを使ったのは(1)ギターからの生の出力であること(2)正弦波に近い といった理由からです。


<図1:Fuzzface回路中の出力波形の観測ポイントAおよびポイントB>

図1の回路図のPointAおよびPointBの信号を同時にPowerbookのステレオ入力に直結し、M-AUDIO FireWire410を介してLogic7を用いて取り込んだ音声(サンプリング周波数44.1kHz)の波形を画面キャプチャーで画像化する、というなんだか原始的な方法を用いてます。
とはいえ音声信号を見るくらいのレベル(周波数)だったらオシロより便利かもしれません。
(残念ながらPowerbookのステレオ入力は「音が録れる」レベルでしかなく、計測に使うのは難しいようです・・・)

24-27.gif
<図2:2SB422_Sample24 & 1弦12フレット(E)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

49-27.gif
<図3:2SB422_Sample49 & 1弦12フレット(E)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

98-27.gif
<図4:2SB422_Sample98 & 1弦12フレット(E)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

24-27G.gif
<図5:2SB422_Sample24 & 3弦12フレット(G)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

49-27G.gif
<図6:2SB422_Sample49 & 3弦12フレット(G)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

98-27G.gif
<図7:2SB422_Sample98 & 3弦12フレット(G)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

24-49-98.png
<表1:図2〜7の波形観察時のVCB1およびVCB2の値>

表1の結果は、概論3での付図3〜6の結果を簡略化した感じになっています。

Sample24において1弦12フレットのハーモニクスEがマトモに出ない(図2)のは、表1での測定結果よりVCB2が飽和領域どころかマイナスであるためトランジスタが機能していないことが理由と思われます。図5の3弦12フレットのハーモニクスGの場合に多少なりとも出力が行われているのは、入力信号自体がEに比べて大きいためでしょう。

Q1のhFE1が大きくなるにつれてVCB2が大きくなりQ2が飽和領域から離れ、他方VCB1は小さくなってQ1が多少飽和領域に近づいていますが、左記の電気的な状況が出力Bに及ぼす影響はSample49の非対称波形(図3B および 図6B)から Sample98の対称に近い波形(図4B および 図7B)への波形変化として現れています。

投稿者 fff : 12:46 AM | コメント (0)

Fuzzface概論7(実測波形観察2)


<概論3 図8:Iceo vs 「真のhFE」(Temp: 21.9~22.6℃)>

概論6に引き続き、Fuzzface概論3でIceoと「真のhFE」との相関を示したサンプルの一部(2SB370_Sample15, 12, 11)をQ1として(Q2は2SB370_Sample27)、実際のギター入力(1弦12フレットのハーモニクス(E) および 3弦12フレットのハーモニクス(G))に対する出力波形を観察してみます。


<概論6 図1:Fuzzface回路中の出力波形の観測ポイントAおよびポイントB>


15-27.gif
<図1:2SB370_Sample15 & 1弦12フレット(E)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

12-27.gif
<図2:2SB370_Sample12 & 1弦12フレット(E)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

11-27.gif
<図3:2SB370_Sample11 & 1弦12フレット(E)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

15-27G.gif
<図4:2SB370_Sample15 & 3弦12フレット(G)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

12-27G.gif
<図5:2SB370_Sample12 & 3弦12フレット(G)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

11-27G.gif
<図6:2SB370_Sample11 & 3弦12フレット(G)の出力結果(上段:PointA,下段:PointB)>

15-12-11.png
<表2:図1〜6の波形観察時のVCB1およびVCB2の値>

Iceoの増大による出力波形への影響を見るため、「真のhFE」はほぼ同じでIceoのみが異なるサンプル(Sample15⇒12⇒11の順にIceoが増大)を使用して結果を採取して見ました。
図1⇒図2⇒図3(もしくは図4⇒図5⇒図6)におけるPointAの結果を比較すると、
期待通りIceoが増大することにつれて波形の上側のアタマがつぶれてくることが判ります。

投稿者 fff : 08:58 PM | コメント (0)

Fuzzface概論8(エージング)

Aging.gif

投稿者 fff : 11:41 PM

Fuzzface概論X(結論)

とりあえず思惑通り動くことは確認しました。あとは煮るなり焼くなり・・・。
これでイグノーベル賞まちがいなし?????

1段目トランジスタとベースがオープンなトランジスタは特性の揃ったものを使ってください。

参考文献1:はじめてのトランジスタ回路設計 (黒田 徹 著/CQ出版社)
参考文献2:解析OPアンプ&トランジスタ活用 (黒田 徹 著/CQ出版社)
参考文献3:'88年版最新トランジスタ規格表(CQ出版社)

<回路の説明>

投稿者 fff : 11:02 PM | コメント (0)